疲れてるのかなぁ…
なんか、甘いのが欲しい

「はぁ…お砂糖が欲しい」

ポツリと呟いた声が聞こえたのか、通りかかった人物が足を止めた。

「何がお望みだって?」

「ヒノエ…」

「姫君のお望みとあらば、なんでも叶えてやるぜ?」

慣れた仕草で見せるウィンクに、どきりと胸を弾ませた。



――― う…カッコいい…



けれどそれを認めるのがこの時はなんだか悔しくて、それを誤魔化すように大げさに笑いながら、先程呟いた台詞をヒノエに告げた。

「えと、何か甘いもの持ってない?疲れたみたいで…」

「甘いもの…」

「あ、なければ別に…」

いいんだけど…

という言葉を発するはずの唇は、柔らかな何かで塞がれ音が出ない。





さぁっ…と、吹き抜けた風で鮮やかな朱の髪が揺れる。
囚われたように、燃えるような赤い瞳から目が反らせない…

そして、ようやく自分の唇に触れているものがなんだかを実感する。

「っっっ!!」

瞬時に頬だけでなく耳まで熱が集まり、顔全体が赤くなる。
それと同時に艶やかな笑みを浮かべたヒノエがゆっくり離れていった。

ひっ…ひの…ひの…え…

驚いたやら、恥ずかしいやら…色んな感情が入り混じって、名前すらまともに口に出来ない。
そんな様子を見ながら、ヒノエは自らの唇に指を押し当て、その指をあたしの唇へ乗せた。

「お前の唇以上に甘いものなんて知らなくてね。からオレへ、そしてオレからお前へ…その甘さを口付けで伝えさせて頂いたよ」

あたしの唇に添えた指を、再び自らの唇に押し当て軽やかな音を出す。

「っ!!」

「…まだお望みかい?」





不用意な発言は、この人の前では本当に命取りだ…と思った。





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2008web拍手、名前変換入れて手を加えて再録。
お砂糖シリーズでUPしていたものです。
お砂糖シリーズというタイトル通り、無駄に甘いです(笑)
やっべ…遙かが懐かしいとか思い始めている。
まだまだ連載とか書きかけなのに!
第一の山場で止まってるのにっ!
一部の人読んでるのにっ!!
…はい、また、気が向いたら頑張りますので、今はこのお砂糖で我慢してくださいませm(_ _)m